2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯・亜熱帯林生態系による自然起源オゾン破壊物質のガス交換過程の解明
Project/Area Number |
21710020
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
斉藤 拓也 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 研究員 (40414370)
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Keywords | 塩化メチル / 臭化メチル / 成層圏オゾン / 熱帯林 / 安定同位体 |
Research Abstract |
熱帯林・亜熱帯林は自然起源のオゾン破壊物質である塩化メチルや臭化メチルの主要な発生源であるが、そこに生息する微生物はそれらの吸収源として作用していると考えられている。本研究では、これらを区別するための安定同位体トレーサー法を導入することで、熱帯植物の葉からの放出に加え、葉上などに生息する微生物等による塩化メチルおよび臭化メチルの吸収量を推定することを目的としている。昨年度は、塩化メチルおよび臭化メチルの安定同位体標準ガス(^<13>CH_3Cl、^<13>CH_3Brを含む)を整備すると共に、これを用いた安定同位体トレーサー法を確立した。今年度は、安定同位体トレーサー法を、マレーシアの熱帯林(ネグリセンビラン州・パソ森林保護区、サラワク州・ランビル国立公園)および西表島の亜熱帯林に生息する熱帯・亜熱帯植物に対して適用し、これらの植物による塩化メチルおよび臭化メチルのガス交換速度の測定を行った。その結果、主要な塩化メチル放出植物であるフタバガキ科樹木が、単に塩化メチルを放出するだけでなく、数~数百ng/g(dry leaf weight>/h程度で塩化メチルを吸収していることが明らかとなった。また、放出速度に対する吸収速度の割合は、塩化メチルより臭化メチルにおいて大きく、Shorea multifloraやDipterocarpus sublamelatusなど幾つかの熱帯植物では放出速度と吸収速度がほぼバランスしていることがわかった。
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