2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯落葉林における上層木と下層植生の蒸散量の個別評価
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21710021
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
飯田 真一 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 主任研究員 (70375434)
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Keywords | 熱帯落葉林 / 蒸散量 / 蒸散量 / 上層木 / 下層植生 / 表面コンダクタンス |
Research Abstract |
本研究はカンボジア国における落葉林を対象として、現地観測に基づいて(1)上層木と下層植生の蒸散量と水収支への寄与率、ならびに(2)上層木と下層植生の蒸散とその全蒸散量への寄与率の季節変化を明らかにすることを目的とする。そして、(3)上層木と下層植生それぞれの気孔の開閉度(表面コンダクタンス)の評価とその環境応答特性のモデル化を行い、上層木が消失した場合の環境変化を簡易予測する。本年度中は、昨年度に設置した樹液流速測定システムの抜本的な修正と改善を行い、上記目的(2)をほぼ達成した。 本研究では、樹液流速測定法としてグラニエ法を用いている。昨年度中は市販センサを用いた計測を行っていたが、故障が多発し、それに伴う欠測とセンサの交換のための時間および経費上の負担が増大した。そこで、本年度はセンサを自作し、故障の原因であるヒータ線の断線が発生しにくいように改良を加えた上で計測システム全体を再構築した。その結果、故障は激減し、安定したデータが取得可能となった。 計測を行った対象木は、いずれも落葉広葉樹のShorea obtusa5個体、Dipterocarpus tuberculatus3個体、Terminalia tomantasa3個体、Xylia xylocarpal個体である。同一林分を構成するこれらの樹種間において、植物季節の差異による蒸散量の季節変化の差異が明らかとなった。展葉後の主要な着葉期間における平均単木蒸散量は、いくつかの例外を除いて、他の木によって被陰されない樹冠投影面積との間に決定係数0.59の正の相関を有していた。同林分では孤立木から樹冠が重複する個体まで光環境が大きく異なっているため、より良好な光環境にある個体の蒸散量がより大きいことが明らかとなった。また、乱流変動法による生態系の全蒸発散量に占める上層木の蒸散量の割合は約6~7割と推定され、非閉鎖の林冠を有する同林分では下層植生と林床面が主要な蒸発散のソースであることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)