2011 Fiscal Year Annual Research Report
亜寒帯陸域の植生動態・エネルギー・物質循環の将来予測に関する数値モデル研究
Project/Area Number |
21710027
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
戸田 求 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 特任助教 (40374649)
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Keywords | 大気-生物圏相互作用 / 炭素循環 / 植物の構造・機能 / 植生動態モデル |
Research Abstract |
将来の気候変化に対する亜寒帯陸域生態系の気候変化応答を定量的に評価することを目的として、北海道内の発達段階の異なる2つの森林を対象に植生動態、エネルギー・炭素循環に関わる野外観測を継続させ、これらのデータを用いた数値モデル研究が継続された。特に、最終年度は、将来の気候変化の下でその頻度や強度が大きく変化することが考えられでいる台風やハリケーンにみられる、いわゆる大規模風害に注目し、この大規模風害が森林生態系の炭素循環に及ぼす影響について、その定量的な評価を行うためのモデル解析研究を行った。 2004年の大型の台風通過後、林構成が単純な同一種同齢林では,台風による被害が大きかった。しかし、その後の葉群の急激な回復により、炭素吸収量は台風撹乱以前に比べて大きく増加する傾向を示した。他方、多樹種で構成された、空間的にも鉛直的にも不均一性の高い空間構造を有する森林では、同一種同齢林に比べて台風被害が小さく、炭素収支変動も台風前後で小さいことがわかった。この結果を受け、台風撹乱が森林生態系の構造や機能に与える影響を調べるためにベイズ統計手法を用いて、台風前後の生物変数を検出する逆推定解析を行った。その結果、植物の機能や構造に関わる生物変数のうち、総光合成速度の光飽和値と光合成-光曲線の飽和値の半分に相当するパラメータに変化が見られ、この植物の機能と構造を反映する二つの生物変数の双方が、撹乱後の若齢森林で大きく変動し、生態系炭素吸収量に大きな影響を及ぼすことがわかった。この結果は、植物の撹乱に対する回復性(復元性、弾力性)を,植物の生理生態的応答の観点から定量的に評価したことが興味深いと考えられ、現在、学術論文投稿の準備を進めているところである(申請者が主著者)。この研究は、ハーバード大学進化生態学研究室の研究者との共同研究である。このように、筆者は研究実施計画にそった研究を展開させ、また訪問した海外の研究機関の研究者との共同論文作成の実現など果たし、森林生態系における大気との相互作用に関する成果を着実にあげてきた。
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Research Products
(1 results)