2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21710028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩花 剛 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 特任助教 (70431327)
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Keywords | 永久凍土 / 大雪山系 / 富士山頂 / 含氷率 / ヤクーツク / 安定同位体比 / ロシア / チョクルダ |
Research Abstract |
本研究は,永久凍土の分布形態が違う,東シベリア,大雪山系山頂部,富士山頂部の3地域を利用して,気候変動が凍土の絡む生態系と水循環現象に与える影響を評価するものである. ヤクーツクでは,永久凍土動態の自動観測を継続した.また,永久凍土地帯特有の地表層水文現象の特徴を捉えるために,ヤクーツク近郊とチョクルダ近郊にて1.5~7mのボーリングによる土壌試料採取を行った.これらのコア試料には季節融解層と永久凍土上層部が含まれており,今後予測されている地球規模の温暖化が進行した際に融解する凍土である.コア試料から体積含水率・体積含氷率,地中水の安定同位体比プロファイルが明らかになった. 大雪山系山頂部では,10m深でもなお永久凍土が存在することが判明した.深い部分の地温プロファイルを外挿すると,永久凍土層は考えられていたよりもさらに深く30~40mとなる可能性が示された.さらに山頂部の3箇所にて2~5mまでの数年間の温度プロファイル変化を得た.3~5年間の地温観測からは,この1-2年で最大融解深が最大となり深部の永久凍土温度は昇温傾向を示した.こうした地温観測の結果,大雪山系の永久凍土は,近年の気候変動によって永久凍土の後退や消滅が危惧されている他の世界の永久凍土南限地帯に似た,永久凍土層の消長が注目される場所であることがわかった.永久凍土上層部の採取を行い,地中水の安定同位体比プロファイルを得た.東シベリアと同様にシールド層と呼ばれる地下氷の大規模融解を遅らせる高含氷率の層が1-2m深に存在し,この層以深で氷の同位体比が大きく変化することが示された.この変化を用いて地球化学的に永久凍土の融解過程を捉えられる可能性がある. 富士山頂部においても3~10mの地温観測孔を設置でき,2年後には定義に基づいた永久凍土の存在が確認され予定であり,その変化を捉える体制が整った.
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