Research Abstract |
本研究課題は,都市系廃棄物由来のバイオ燃料として,重油代替の低炭素燃料であるバイオオイルを取り上げ,その生産・転換・利用システムの持続可能性/リスクを環境・健康・生態影響の側面から定量的に評価することを目的とするものである. 本年度は,大阪府をケーススタディの対象として,2つの分析を実施した.まず,下水汚泥を原料にしてバイオオイルを生成する技術による低炭素効果を,LCAの手法を用いて定量的に評価した.その結果,バイオオイル生成技術を下水処理プロセスに適用し,生成したバイオオイルを重油代替燃料として産業利用することによって,現状の下水処理システムに比して温室効果ガス排出量が半減しうることが分かった.次に,バイオオイルを産業炉で燃焼利用することに伴う健康影響について,NO_xを指標にして大気環境濃度の推定,および曝露人口の推計をおこなった.ここでは,産業技術総合研究所が開発した曝露・リスク評価大気拡散モデル(ADMER)を用いて,A重油へのバイオオイル混合率を1,2,3,4,5,10,30%としたときの影響を分析した.その結果,5%混合までであれば0.1mg/m^3を超える濃度に曝露される人口はゼロだが,10%混合になると1.1万人強,30%混合であれば約59万人が高濃度に曝露されることが分かった. 以上から,ヒト健康へのネガティブな影響を引き起こさずに,地域や産業システムの低炭素化に寄与しうるバイオ燃料生産・利用システムについて示唆を得ることができた.
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