2010 Fiscal Year Annual Research Report
「資源の呪い」から持続可能な発展への転換を促す外資自主規制の役割に関する研究
Project/Area Number |
21710043
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
栗田 英幸 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60335883)
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Keywords | 資源の呪い / 外資自主規制 / 民主制度 / 合意形成 / 援助・輸出信用 |
Research Abstract |
21年度は、これまで研究を蓄積させてきたフィリピンとの比較対象としてのオーストラリアの調査・分析に従事する一方で、フィリピンでの研究の蓄積をフランスの開発関連学術誌に投稿し、さらに近年注目される脱成長の議論と資源開発との連関について論文を投稿した。 オーストラリアでは、分析対象として選定した3つの鉱山について現地調査を実施するとともに、現地の研究者や活動家、先住権ホルダーとのネットワークを構築することができた。現地調査では、鉱業先進国オーストラリアでさえ資源の呪いを完全に克服できていないことを確信するとともに、企業の自主規制の差が民主制度変質の程度の差となってあらわれていることを確認することができた。特に、鉱業先進国といえども、市民活動のネットワークが十分に機能してこなかった地域では、途上国同様の深刻な人権被害が生じていることが明らかとなった。他方で市民ネットワークとのアクセス能力が高い事例では、同じ法制度の下で企業の自主規制を十二分に利用している。この差異についての分析は今年度の課題であるが、本研究の仮説を立証する上で重要な知見であると実感している。 また、これまでの研究蓄積が認められ、フランスの開発関連学術誌から執筆のオファーがあり、フィリピンにおける「資源の呪い」の症状と新たな分析視覚を提示する原稿を投稿し、掲載された。この結果、フランスおよびベルギーから共同研究のオファーや論文内容についてのコメント等が寄せられており、今後の更なる研究のための基盤づくりにも役立っている。
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