2010 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカの獣害発生地域における野生動物と人間の共存に関する研究
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21710049
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩井 雪乃 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 助教 (80507096)
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Keywords | アフリカゾウ / 獣害 / 認識 / 対策実践 / 環境社会学 / 環境と社会 / 生物多様性保全 / タンザニア |
Research Abstract |
本研究の調査地は、タンザニアのセレンゲティ国立公園に隣接する村落で、国立公園から出てくるアフリカゾウが、村の農作物を食害する被害が出ている地域である。本研究の目的は、1)獣害認識形成過程の解明、2)被害緩和策の実践、を実施し、その上で、3)「有害な野生動物と人間の共存」のアフリカ的モデルの構築を試みることである。 本年度は、2)被害緩和策の実践として、2010年2月に寄贈したパトロールカーを村政府および現地NGOと連携しながら運用し、被害軽減に努力した。1)獣害認識形成過程の解明の一環である聞き取り調査の結果では、村は適正な運用に努力しており、村人から高い評価を受けていた。 今年度の調査から明らかになった独創的な点は、「被害に遭うこと」と「被害苦情の声の強さ」が、必ずしも相関関係にはならない点である。2010年は、2009年と被害世帯の割合は同等であったが(2009年77%および2010年72%)、被害対策を実施する村政府や国立公園局に対する不満の意見は、より小さかった。この結果は、ゾウパトロールカーを導入し、「村政府」という「自分の所属する組織」によって、対策の努力をしたことが、大きく影響していると考えられる。 ニホンザルによる被害認識を研究した鈴木(2008)は、被害感情を共有する相手がいることで、被害者が被害意識を先鋭化させないことを指摘している。つまり、第三者が被害者に寄り添って共感することで、被害を受けている住民が被害を許容する度合いが高まるのである。これは、セレンゲティでも同様な可能性があり、絶滅危惧種であるアフリカゾウではなく住民の生活に配慮し寄り添う第三者が増えれば、住民が被害を乗り越えてゾウと共存する意識を高めることにつながることを示唆している。
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Research Products
(6 results)