2011 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカの獣害発生地域における野生動物と人間の共存に関する研究
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21710049
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩井 雪乃 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 助教 (80507096)
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Keywords | アフリカゾウ / 獣害 / 認識 / 対策実践 / 環境社会学 / 環境と社会 / 生物多様性保全 / タンザニア |
Research Abstract |
本研究の調査地は、タンザニアのセレンゲティ国立公園に隣接する村落で、国立公園から出てくるアフリカゾウが、村の農作物を食害する被害が出ている地域である。本研究の目的は、1)獣害認識形成過程の解明、2)被害緩和策の実銭、を実施し、その上で、3)「有害な野生動物と人間の共存」のアフリカ的モデルの構築を試みることである。 本年度は、2)被害緩和策の実践として、ゾウパトロールカー普及に向けて、セレンゲティ県マンチラ郡の村長たちと会議を開いて協議し、導入のための予算獲得や組織作りなどの準備行程を具体化させた。また、ケニアで開発された「養蜂箱フェンス」の視察・研修を行い、セレンゲティへの導入を現地NGO・SEDERECの主導により進めている。1)獣害認識形成過程については、セレンゲティ県内でも条件の異なる地域(被害規模・外部支援の有無・住民組織の有無)での聞き取りをすすめることができた。 今年度の研究からは、住民による主体的な被害対策手段(本研究の事例ではパトロールカー)を有している村は、手段を持っていない村よりも、被害の補てん責任を上位政府組織(県・国など)に問わない傾向が明らかになった。被害量そのものは、一時的には減少したが、再び増加する傾向がある。パトロールカー導入以前の被害世帯割含は89%(2006年)であった。導入直後の2007年2008年は40%台に半減したが、その後再び悪化して2009年2010年は70%台の世帯が被害にあっている。しかし、それにもかかわらず、対策や補てんを求める意見は導入以前ほど強くはなかったのである。 被害量が減ることは住民への経済的損失を減らす上で必要なことである。しかし、被害認識の観点からは、主体的な被害対策手段をもっているかどうかが、大きな要因となることを示唆している。これは、「動物との共存モデル」を構築する上で、たいへん重要な示唆である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的では「『有害な野生動物と人間の共存』のアフリカ的モデルの構築」を4年間のゴールとしている。これまで3年間の現地調査からデータは蓄積されており、さらに学会・研究会等での発表や議論通じて、アフリカ他地域での事例や日本の事例との比較作業も進めている。今年度は、さらに考察を深めて、モデル構築の到達を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまで現地調査で収集した資料を整理し、文献資料を参照しながら論文執筆を進める。また、現地での被害対策活動を日本から後押しすることも継続していく。また、次の科学研究費を申請し、東アフリカの事例を中心にした現在のモデルから、さらに南部アフリカや中部アフリカの事例も加えて、アフリカゾウという生物との共存について考察を深める計画である。
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Research Products
(3 results)