2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA複製及び転写に対するDNAータンパク質クロスリンク損傷の影響
Project/Area Number |
21710059
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中野 敏彰 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (10526122)
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Keywords | DNA-タンパク質クロスリンク / 転写 / 複製 |
Research Abstract |
多くのゲノム損傷誘発因子はDNAと結合タンパク質の間に架橋を形成し、DNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷を生じる。しかし、不可逆的にトラップされたタンパク質が転写や複製にどのような影響を与えるかは明らかにされていない。本研究では、転写に対するDPCの影響をin vitroで検討した。まず、これまでに確立したDPC選択的導入法を用い、転写鎖および非転写鎖にサイズの異なるタンパク質(1.6~44kDa)を含む鋳型を構築した。転写反応はT7 RNA polymerase (T7RNAP)を用いて行い、転写産物は変性PAGEで分析した。その結果、転写鎖のDPCはT7RNAPの転写反応を強く阻害するが、DPCを乗り越えた転写産物(runoff product)も生成することが示された。runoff productの量は、DPCサイズの増加とともに減少した。一方、非転写鎖DPCの阻害効果は弱かった。さらに、PAGE分析の結果から、runoff productの長さが短くなるDPCが認められたことから、T7RNAPがDPCを含む鋳型を転写する際に、転写エラーが起こるかどうかを検討した。転写で生じたrunoff productを逆転写後、クローニングし、塩基配列を解析した。その結果、転写産物には高い割合で変異が含まれており、DPCの上流1-20塩基および40-50塩基二カ所に変異のホットスポット(塩基欠失・塩基置換)があることが明らかになった。この結果は、損傷のない部位で転写エラーが起こっていることを示しており、その機構を考察している。
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