2009 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ヒ素中毒症誘発がんの予防・治療法開発を目的とした原因遺伝子の同定と機能解析
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21710071
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
上村 規行 Chubu University, 生命健康科学研究所, 研究員 (30532791)
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Keywords | がん / シグナル伝達 / ヒ素 |
Research Abstract |
慢性ヒ素中毒症の患者数は全世界中で5,700万人にも達すると言われている。しかしながら、これまでに慢性ヒ素中毒症についてその原因遺伝子の同定はなされていない。本研究ではin vitro実験系から知見を得ることで慢性ヒ素中毒症によって引き起こされる疾病の原因遺伝子の同定及び機能解析を行い、慢性ヒ素中毒疾患の予防・治療法の開発を目指した。 ヒ素を6ヶ月の間曝露したヒト正常ケラチノサイトHaCaT細胞から得られたRNAを用いたマイクロアレイ法により、長期間のヒ素曝露によって発現が著しく遺伝子群を同定した。そのうち、ヒ素曝露によって発現が著しく上昇する遺伝子を数個選定し、機能解析を開始した。 また、バングラデシュのヒ素汚染地域から採取した井戸水中に含まれる金属の濃度をICP-Mass法により測定した結果、ヒ素だけでなくバリウムイオンおよび鉄イオンの濃度も著しく高いことが明らかになった。そこで、ヒ素・バリウムイオンおよび鉄イオンが生体に与える影響をin vitro実験系により検討した。 その結果、バリウムイオンはヒ素と協調して転写因子NF-kappaBを活性化することで細胞のヒ素依存的な細胞死に対する感受性を弱めていることを明らかにした。バリウムイオンが共存することで、ヒ素による足場非依存性増殖および浸潤・転移能の亢進がさらに促進されることを明らかにした。 また、鉄イオンががんの移動・浸潤能について与える影響について検討した。その結果、2価の鉄イオンががんの移動・浸潤能を促進することを明らかにした。さらに、この鉄イオンによるがんの移動・浸潤能の促進には、炎症性サイトカインであるTNFalphaの発現誘導が必須の働きをしていることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)