2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化有機ナノ構造による新奇量子状態の実現と制御
Project/Area Number |
21710097
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金澤 研 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60455920)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 表面界面物性 / ナノ材料 / 自己組織化 / 物性実験 |
Research Abstract |
本研究では、金属表面上の有機分子自己組織化単分子膜によって形成される低次元電子状態を、人為的に制御することを目的とし、主に銅基板上のアミノ酸分子を対象にSTM測定を行っている。グリシン分子をCu基板へと吸着させた場合、分子基板間相互作用により新たな電子状態が形成される。このような状態が、主鎖および側鎖の官能基を変えていくことで、どの様に変化するかを解析する。また、これらの自己組織化構造をテンプレートとしてフラーレン分子等の孤立吸着状態を実現し、STMを用いた吸着状態の観察及び状態操作の可能性の検討を行なっている 最終年度である23年度は、22年度の結果を基にCu(111)基板上の研究を主に行った。通常の清浄Cu(111)表面の場合にはステップ端に凝集して吸着しやすい性質を持つ金属内包フラーレンLa@C82を、グリシンで作成した自己組織化ナノ網目構造をテンプレートとして用いることにより孤立吸着させ、走査トンネル分光(STS)を測定することによりその電子状態を調べた。その結果、テンプレート内に単一に吸着したLa@C82は凝集した状態とは異なる電子状態を有していることを明らかにした。両者が異なる理由としては、La@C82のもつ半占有軌道(SOMO)が、分子が多数凝集したときは結合軌道を形成するのに対し、孤立吸着した分子ではその軌道がさほど変化しないためと考えられる。 さらに、密度汎関数法による理論計算を行い、実験およびシミュレーションSTM像を比較することにより、Cu(111)表面上に吸着したグリシン分子の吸着形態を決定した。その結果、自己組織化網目構造は、基板上の三回対称中心に吸着したグリシンの三量体を単位構造として形成されており、分子間の水素結合によって安定化していることを示唆する結果を得た。 これらの結果の一部を研究成果として論文投稿し、Chemical Communicatios誌に掲載された。
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Research Products
(4 results)