2010 Fiscal Year Annual Research Report
光と物質波の理論研究:散逸量子多体系における微視・巨視のリンク
Project/Area Number |
21710098
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
金本 理奈 お茶の水女子大学, お茶大アカデミック・プロダクション, 特任助教 (00382028)
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Keywords | 冷却原子 / 光共振器 / 光軌道角運動量 |
Research Abstract |
物質波の操作・状態評価・物性探求に関する微視的量子論を構築するため、以下の研究を行った。 1.エンタングルした光をラムダ型三準位構造を持つ原子の集団に照射することで、原子集団に非古典的状態(ここでは巨視的に区別できる量子状態の重ね合わせ)を動的に生成可能であることを前年度に示した。本年度はこのプロセス全体のディコヒーレンスを抑えることを目的に、原子の非古典的状態生成の忠実度が光子統計性にどのように依存するかを調べた。その結果,(1)コヒーレント光よりスクィーズド光から成るエンタングルド光の方が堅固である、(2)平均光子数が少ないエンタングルド光はより堅固であるが、原子の状態占有数を遷移させるためには、総原子数に見合う程度の光の強度が必要である、(3)充分な光の強度があれば原子の忠実度と、原子損失に対するディコヒーレンスは光子統計に依存しない、ということが明らかになった。本研究では光が軌道角運動量を担い、原子集団が周期的境界条件を持つポテンシャルに閉じ込められていると想定しているため、巨視的に区別できる量子状態は異なる渦度を持つ物質波のカレントに相当する。これらの重ね合わせを原子集団に生成する手法はこれまでにも提案されており、超伝導量子干渉計で観測された超伝導電流の重ね合わせ状態との類似からも実現の期待が高まっている。本研究は、その実現に向けた光を用いる生成法を提唱し、詳しい条件を提示した点に意義がある。 2.一次元ボース原子気体の角運動量一定のヒルベルト部分空間におけるスペクトルは、非線形シュレディンガー方程式の解であるソリトンと密接に関係していることが前年度までにわかっていた。本年度は、そのようなスペクトルの中でも、これまでに調べられていなかった第二励起以上を系統的に構築することにより励起の特徴を明らかにした。結果、特定の角運動量では可能な励起の数が極めて少なく、準安定超流動カレントの準安定性が示唆されること、また一見乱雑と考えられていた励起が、実際には単純な縮退数と分散関係で記述できることを見出した。本研究はミクロにかつ厳密に励起状態を解析する方法論を示した点に意義がある。
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