2010 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物超伝導体の磁束量子ビットにおける量子コヒーレンスの研究
Project/Area Number |
21710100
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柏谷 裕美 独立行政法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス研究部門, 研究員 (60443181)
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Keywords | 量子ビット / 銅酸化物超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 |
Research Abstract |
銅酸化物超伝導体は、量子ビット実現の有力な候補の一つであり、これまでは、将来的な多ビット化への応用を念頭に、2番目にスイッチするsecond switchに関して着目し、先導的な実験を行ってきた[1]。本研究では、一つの接合がゼロ電圧状態から有限電圧状態にスイッチした際の他の接合への影響を調べることで、結合した多体に関する量子ダイナミクスの研究を行った。 固有ジョセフソン接合では、複数の接合が近接して存在するため、接合間には電気的、磁気的に結合が生じ、複数の量子力学系が相互作用を持ちながら運動する。実際の応用においてもこの結合をなくすことは不可能であり、量子力学系同士の相互作用がどのように起こるか検証する必要がある。接合間の電磁気的な結合は、超伝導電極に対応する超伝導層によって電場、磁場がシールドされることにより弱まるが、Bi_2Sr_<1.6>La_<0.4>CuO_<6+δ>では超伝導層がCuO_2面一層であることから、現実に存在しうる最も強い電磁気的な相互作用を有する接合列である。この接合を用いた結果、multi-junction switchingという新しいタイプのスイッチングの観測に成功した。MJSとは、接合中の一部の接合が複数同時にスイッチする現象である。また、このスイッチング現象は、測定回路中に固有ジョセフソン接合と直列に接続した抵抗の値により制御できることが判明した。同時スイッチ現象は、固有ジョセフソン接合中の全ての接合が同時にスイッチするuniversal junction switching(UJS)も報告されているが、UJSで観測されていたescape rateの増大が観察されなかったことにより、UJSとは全く異なるダイナミクスであることも判明した。 [1]H.Kashiwaya, T.Matsumoto, H.Shibata, S.Kashiwaya, H.Eisaki, Y.Yoshida, S.Kawabata, Y.Tanaka, J.Phys. Soc. Jpn. 77, 104708(2008)
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