2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規素材カーボンナノチューブの毒性及び発がん性評価
Project/Area Number |
21710106
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤井 千文 Shinshu University, 医学部, 助教 (10361982)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 発がん性 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNTs)の生体に与える影響についての研究は、近年のナノテクノロジーの急速な進歩に伴い、非常に重要であると考えられる。CNTsの急性毒性に関しては、昨年来、その長さにより炎症誘導性が異なることが報告されている。また、慢性の影響として、p53ヘテロノックアウトマウスおよびラットを用いた系において、ある種の多層CNTによる中皮腫の発症が報告された。そこで、本研究では、CNTsの形状や製造過程の違いにより、急性毒性や発がん性に差があるかどうかを解析し、より生体に安全なCNTsの物性特性を提案することを最終目標とする。このうち本年度は、マウスを用いた実験系において、CNTsの形状や製造過程での処理法の違いによる急性期および慢性期の生体応答の差について解析を行った。 マウス腹腔内に形状・処理法の異なる種々の多層CNTsを単回投与し、急性期および慢性期の変化の解析を行った。まず、急性期の応答を調べるため、投与後7日における腹腔浸出全細胞数・好中球・マクロファージの数を比較した。その結果、形状・処理法の異なる13種のCNTsのうち6種で、腹腔浸出細胞数の増加が見られた。また、同種のCNTsをマウス腹腔内に単回投与後、長期の観察を行ったところ、3種のCNTsで、投与後200日経過前後より腹水の貯留が認められた。さらに、この3種のCNTsを含む6種のCNTsの投与により、腹腔内臓器の癒着を伴う死亡が観察された。しかし、上記6種と形状・処理法が異なるCNTsでは、著しい変化は認められなかった。また、この6種は上記急性炎症をより強く惹起するCNTsと一致していた、,以上の結果より、CNTsの形状や製造過程での処理法により、生体に対する影響が異なることが示唆された。このことから、CNTsの物性特性が急性毒性や発がん性に違いをもたらす可能性があると予想される。
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