2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子井戸状態の制御による高MR比強磁性トンネル接合構造の電子論的探索
Project/Area Number |
21710110
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
沢田 正博 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (00335697)
|
Keywords | 超薄膜 / 強磁性トンネル接合 |
Research Abstract |
本研究は、超高真空中において、原子スケールの平坦性とストイキメトリーを保った理想的な接合界面を持つ強磁性トンネル接合(MTJ)構造を単結晶表面上の超薄膜構造として作製して、界面状態を評価したうえで、放射光を用いた分光測定により、その電子状態を観測することが目的である。本年度は、これらのうち、超薄膜のMTJ構造作製および界面状態評価に取り組んだ。また、MTJ構造を利用したTMR素子の要素技術として重要と考えられる、強磁性超薄膜の垂直磁化に関する研究を行った。本年度の具体的な研究実績は、以下の通りである。 (1)超薄膜MTJ構造作製 Ag(001)単結晶基板上の超高真空蒸着法により、超薄膜試料Co/MgO/Ag(001)の作成を試みた。190℃に保ったAg(001)基盤上に4×10^<-6>Pa程度の酸素分圧下でMgを蒸着することにより結晶性とストイキメトリーのよいMgO(001)超薄膜を作製することができた。5MLのMgO(001)上にCo超薄膜を作製して膜厚較正と結晶性の評価を行い、超薄膜試料としてのMTJ構造界面の作成が可能なことを確かめた。 (2)MTJ構造界面状態評価 超薄膜試料Co/MgO/Ag(001)のXASおよびXMCD測定を実施して、界面における化学状態を調べるとともに、Coの磁気状態を調べた。Co/MgO界面においては、Coが酸化されておらず金属的な界面が形成されることがわかった。また、Coの磁気異方性は面内磁気異方性を示すことがわかった。 (3)強磁性超薄膜の垂直磁化 超薄膜試料Co/MgO/Ag(001)ではCoが面内磁化であったので、TMR素子メモリの高密度化と熱的安定化に寄与する垂直磁気異方性が実現するCo超薄膜の研究を行ない、Pd/Co/Pd(001)超薄膜において、室温で安定な垂直磁気異方性が成立することを発見した。
|
Research Products
(2 results)