Research Abstract |
光の波長より微細な周期構造による共鳴格子を用いた高感度屈折率センサの実現を目標とした.新たに,金属薄膜上誘電体格子構造に着目し,従来の高屈折率導波層を必要とする共鳴格子型センサよりも,低屈折率導波層を実現できることから,屈折率が低い物質でも,導波層の屈折率変化が相対的に大きくなることで,高感度測定が可能なことを計算と実験で確かめた.具体的には,金属膜に金を用い,格子部分に屈折率1.5のPMMAを用いた1次元周期格子を作製した.作製したセンサを用いて,食塩水の濃度を測定した.屈折率変化Δn[R.I.U.(屈折率単位)]に対する共鳴角度変化Δθ[deg.]を感度と表すと,計算値165[deg./R.I.U],実験値140[deg./R.I.U]を得た.この値は,プリズムに金薄膜をつけた表面プラズモン共鳴センサの感度110[deg./R.I.U]を上回るものである.また,表面プラズモン共鳴よりも,共鳴格子型は角度半値幅を1/10程度小さくできることから,わずかな角度変化でも検知しやすくなる.角度分解能を0.005度とすると,検出可能な屈折率変化は,4×10^<-5>であった.さらに,位相測定を行うことで,より高感度になる可能性がある. また,その他の応用として,金属膜にパラジウムを用いた光学式水素ガスセンサへの応用について検討した.パラジウムは,水素ガスを吸収・排出する性質を持ち,水素濃度変化に依存して,屈折率が変化する.そのパラジウムの屈折率変化によって,センサの共鳴角度が変化する.実際に,水素ガス濃度を0vol.%から爆発下限界の4vol.%に変化させると,共鳴角度は約0.04°変化し,水素ガスを検知することに成功した.しかし,この変化量は計算結果と比較して,40%ほど小さかった.この原因は,作製した格子の不均一性によるものであり,作製精度は今後の課題である.
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