Research Abstract |
グラフェンの移動度は,室温で100,000cm^2/Vsを超えるが,零ギャップ故にon/off比が取れない問題がある.そこで,本研究では,2層グラフェンのギャップエンジニアリングを最終目標とし,我々は,それ以上に問題となる金属電極からの注入におけるコンタクト抵抗に着目して研究を進めた.一般に,電流は低抵抗経路を選択するため,金属電極の全面積がグラフェンへの電流注入に寄与するわけではない.金属とグラフェンのシート抵抗を比較した場合,グラフェンでは移動度は高いが低い状態密度のためキャリア数が小さくなり,金属の方が低い.このため,基本的には電流は金属を優先的に流れグラフェンに入る.現実には,完全にエッジで電流が注入されるのではなく,transfer length(d_t)と呼ばれる実効的なコンタクト長さが存在する.今回,コンタクト抵抗率を測定し,金属/半導体界面,金属/金属界面の典型的な値と比較した.また,d_tを算出し,電流注入に寄与しているコンタクト長さを求めた.上部2つの電極に一定電流を流しながら,右側の2つの電極の電圧を測定するcross-bridge Kelvin法によりコンタクト抵抗率を(V/I)dWとして直接測定した.コンタクト抵抗率は,高ゲートバイアス下で~5×10^<-6>Ohmcm^2程度であった.これは,ショットキー障壁を有する金属/半導体界面での値(10^<-7>Ohmcm^2)や金属/金属界面での値(10^<-9>Ohmcm^2)と比較して高い.グラフェンは一般には金属であると認識されるが,高いコンタクト抵抗は低い状態密度に起因すると考えられる.また,d_tはゲート依存性をもつが典型的には1ミクロン程度の値であった.すなわち,4ミクロンのコンタクト長さに対し実際に電流注入に寄与している領域は1ミクロン程度である.チャネル長が100nm程度のものを考慮した場合,コンタクト抵抗がデバイス性能を律速することから,グラフェン側の状態密度を上げる手法が重要となる.
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