2010 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン量子ドットを用いた電子スピン量子ビット開発
Project/Area Number |
21710137
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小寺 哲夫 東京工業大学, 量子ナノエレクトロニクス研究センター, 助教 (00466856)
|
Keywords | 半導体量子ドット / 量子ビット / スピン |
Research Abstract |
シリコン量子ドット中の電子スピンを量子ビットとして用いる量子情報デバイスの物理の解明、ハードウェアのための基本技術の実現を目的として研究を行ってきた。本研究にはスピン状態実現可能なシリコン量子ドットの作製が必要であるが、シリコン中の電子は有効質量が重いため、量子閉じ込め効果を得るためにはGaAs系よりも小さな量子ドットを作製する必要があり、高度な作製技術を要する。 本年度は、偶発的な量子ドットの排除とサイドゲート効果の向上のため、エッチング条件とトップゲートのゲート絶縁膜形成条件の最適化を行い、制御性に優れたシリコン2重量子ドットの作製を行った。本素子を用いて極低温における測定を行い、電子スピン状態に依存するトンネル現象の観測に成功した。本研究で用いた素子は、エッチングにより量子ドット構造とサイドゲートを作製し、その上部にポリシリコンのトップゲート(TG)を形成した構造となっている。ソース・ドレイン間のワイヤ領域に3箇所の狭窄領域をパターニングすることで2重量子ドットを形成した。TGにより誘起した2次元反転キャリアを用いることで面内有効質量の軽い2重縮退谷を有効利用でき、構造及び電圧による量子閉じ込めが効果的に働くという利点が本構造にはある。また、電子線リソグラフィ条件、酸化条件、エッチング条件、酸化膜堆積条件等の最適化を行い、制御性に優れた素子を実現している。極低温において本素子の電子輸送特性を測定することにより、直列結合2重量子ドットに特有の蜂の巣型電荷安定状態図、及び、三角形状の電荷三重点が観測された。また、印加するソースドレイン電圧を逆にすると、電流が抑制される領域が現れることを観測し、パウリスピンブロッケードと呼ばれるスピン依存トンネル現象の特徴的な振る舞いを示している。本研究によりシリコン電子スピン量子ビットに向けた重要な進展を達成した。
|
Research Products
(20 results)