Research Abstract |
半正定値計画問題(Semidefinite Programming,以下SDP)は,量子化学や組合せ最適化など幅広い応用を持つ数理最適化問題であり,21世紀の線形計画問題とも考えられている.しかし,近年の応用では計算量が莫大となる傾向が強く,並列計算を用いた計算時間短縮が重要である.本研究では,計算時間が集中するSchur補完行列に着目し,この行列の多くの要素が0,つまりSchur補完行列が疎となるときに効率的に並列計算を実行するソフトウェアの開発し,その数値実験を行ってきた. 本年度は,電力使用の制限に伴い,従来の大規模並列計算を積極的に行うことが難しい状況となったことを踏まえて,Schur補完行列が疎となる代表的なSDPのひとつであるセンサーネットワークの性質などに重点を置き研究を進めた.ここでは固定されていないセンサーについて,最短路手法によりそのセンサー位置を推測し,SDPを用いた既存手法を組合せることで効率的な手法を検討している. また,多項式計画問題もSDP緩和で精度の高い近時解を得られることが知られているが,この近時解を中心として本来の最適解を含む最小の楕円をSDP計算により求める研究を発展させた.この手法は従来提案されていた手法よりも半径の精度の面では劣るが、計算量が著しく縮小しているため,楕円の形を変化させての反復計算が可能となり,従来手法とは異なった観点で最適解の性質を推定できるようになった。 なお,昨年度までの並列計算ソフトウェア開発およびその数値実験についても,国際学会で発表を行っており,また学術雑誌への掲載される予定である.このソフトウェアは,世界最大規模のSDPを解くことができるソフトウェアとして多くの研究者に認識されており,今後のさらに多方面への利用を期待できる。
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