Research Abstract |
本研究は,電波式パッシブ無線タグ(RFID)を用い,学校,老人ホーム,病院等において,無線タグを名札等に取り付けることによる日常の入退出管理,さらには,温度センサ等のセンサを組み合わせることによる体温等の生体モニタリング,大規模災害時にがれき等の埋まった行方不明者捜索に活用できるシステムの構築を目指す研究である。このシステムの開発のためには,微弱な電波を受信して,その電波のエネルギーで動作する極めて省電力な無線タグを開発する必要がある。そのためには,アンテナの受信効率を高くする必要があり,、アンテナと無線タグのICチップとの間をインピーダンス整合させる必要がある。一方,無線タグは読み取り器に情報を返信する必要があり,そのためには自身のインピーダンスを変化させて,アンテナの電波反射率を変化させる必要がある。そのため,インピーダンス整合の状態を絶えず維持することはできず受信効率が低下する。この問題点を解決するために,受信アンテナと返信アンテナを分離する方法を提案した。これにより,受信アンテナはインピーダンス整合を維持し続けることができるため,微弱な電波を効率よく受信することが可能になる。 本年度は特にこの二つのアンテナの相互影響を電磁界シミュレーションにより調べた。その結果,受信・返信共に半波長ダイポールアンテナを用いると,相互影響が強く現れ,返信アンテナが情報を返信すると受信アンテナのアンテナインピーダンスが変化し,インピーダンス整合を維持できないことがわかった。一方,返信アンテナに1/4波長アンテナを用いると,相互影響を減らすことができることがわかった。これらの知見から,従来よりも受信効率の高いアンテナを持つ無線タグを開発できる可能性があることがわかった。
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