Research Abstract |
本研究では,列車運転における駅停止時のオーバーラン抑制をねらいとして,列車運転士に対する運転支援システムについて,列車運転を模擬した運転シミュレータを用いた実験により検討した.現在の車両の速度と減速度から,予想される停止位置を算出し,シミュレータの模擬映像上に予想停止位置を呈示する運転支援システムをシミュレータ内に構築した.運転士のブレーキ操作が強いため,現在の減速度を維持すると目標停止位置の手前で止まる場合と,ブレーキ操作が弱いため,現在の減速度を維持すると目標停止位置を越える場合において,予想停止位置と目標停止位置との相対関係により,予想停止位置を呈示する色を変えることにより,予想停止位置の認知の支援のみでなく,ブレーキ操作の強弱に相当する判断の支援も行えるシステムとした. 実験では,実際の運転経験はないものの,運転シミュレータの運転になれた20代男性の被験者7名を採用し,通常状態ではオーバーランが発生しにくいことから,心的な負荷として,列車運転中に暗算課題を行うものとした.運転支援システムの有無により,ブレーキ操作に及ぼす影響を検討した結果,運転支援システムがない場合には,ブレーキ操作の修正が確認されたが,システムを用いることにより円滑なブレーキ操作が可能になることを確認した.ブレーキ操作の定量的評価を行った結果,運転支援システムの有無により,一度に操作するブレーキ量について有意な差が確認され,運転支援システムを用いることにより,ブレーキ操作量のばらつきが低減することを確認した. これらのことから,列車運転士に対して心的な負荷が作用するような状況下でも,本研究で提案した運転支援システムを用いることで,通常の状態と同様に円滑にブレーキ操作を行い,所定の位置に停止することが可能となった.
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