2011 Fiscal Year Annual Research Report
地震に先行する地圏-大気圏-電離圏結合の物理機構の解明
Project/Area Number |
21710180
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
鴨川 仁 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (00329111)
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Keywords | 地震 / 電離圏 / 大気圏 / 大気電場 |
Research Abstract |
地震に先行する地下水変化、ラドン発生、電磁気現象、電離圏擾乱についてはいくつかの報告はあるが、大地震の同一箇所での発生頻度が極めて低いことから、統計的研究は難しい。さらに、発生メカニズムが未解明であるため、上記諸現象の存否ですらいまだ決着はついたとはいえない。今年度は、いくつか考えられる地震先行電離圏擾乱の発生メカニズムを検証するために、次の2つの地圏・大気圏・電離圏結合の基礎研究を行った。まず、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(M9.0)発生9分後、GPS-TECの急な変動について解析を行った。TEC変動が始まった津波上部で、TECの大きな低下が見られた。この低下は半径数100kmに及ぶ非常に大きなもので、このTEC減少を津波電離圏ホール(Tsunamigenic Ionospheric Hole,TIH)と名付けた。同様の現象は2004年スマトラ沖地震,2010年チリ地震でも見つかった。さらに福島第一原子力発電所事故によって発生した放射線物質起因の大気電気変動と地球規模電気回路(グローバルサーキット)との関係を調べた。柿岡・地磁気観測所での大気電場データでは一桁以上の晴天静穏時の地表大気電場値減衰がみられた。これらは、徐々に復活するものの2011年10月においても定常状態にはなっていなかった。この変動は、地表沈着放射線線量の減衰に伴っていることから、地表電気伝導度の上昇により電場値が減少するということであると考えられる。以上の測定結果を踏まえ、原発時によるグローバルサーキットの変化を等価回路シミュレーションで調べた。計算によれば、福島原発事故での大気電気の影響は汚染領域かつ下部対流圏と局所的であり、グローバルサーキットや電離圏変動を生じさせるようなことは発生していなかった。
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Research Products
(4 results)