2011 Fiscal Year Annual Research Report
近畿三角地帯における近世の地震被害と人々の対応に関する史的研究
Project/Area Number |
21710181
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
東 幸代 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10315921)
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Keywords | 地震被害 / 日本近世 / 歴史地震 / 近畿三角地帯 |
Research Abstract |
今年度(最終年度)は、近畿三角地帯の西辺(大阪府・奈良県・兵庫県)の歴史地震について検討した。前年度に引き続き、まず、『新収日本地震史料』等からDBを作成した。次に、作成したDBに、既刊自治体史の情報を追加した。さらに、3府県に調査に赴いた。調査対象とした史料の中心は、信頼度の高い日記史料であり、地震の詳細の把握につとめた。調査の結果、いずれの府県でも有感地震の記述が多いことがわかったが、大規模な被害をこうむった地震は、前年度までに調査対象とした6府県に比して多くはない。一方、大規模地震や津波に関する史料は、集中的に残されている。 主な成果は以下の3点である。 (1)江戸幕府の直轄地であった大阪では、領主側の対応がうかがわれる史料が多く採集された。震災に対し、幕府はハード面の復興では早い対応を見せるが、ソフト面では町人らの対応に任せる局面もある。 また、その際の行動原理は、地震・津波災害に即した新規法に基づくわけではなく、治安維持等のための既存の法令を参照系とするものである。 (2)前年度までの調査において、地震後に屋外に戸板や畳を敷いて非難生活を送るという民衆の行動パターンが確認されていたが、今年度の調査では、地震の際に命を守るための行動であると伝承されている地域があることが判明した。 (3)宝永地震や安政東・南海地震による津波発生の際、大阪では海上避難という行動が選択され、被害が拡大したことが知られているが、これは教訓が正しく伝承されていない、もしくは間違った教訓が伝承されてきたことによる。教訓が伝承されていない理由として、被害者への配慮があったと記す史料もあるが、前年度の調査で確認したように、地震津波の教訓は津波を伴わない地震よりも意識的に残されることが多く、今後の減災のために示唆的である。 本研究で得られた知見は、京都、および滋賀における市民向けの講演会で披露した。
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Research Products
(4 results)