Research Abstract |
地震などの災害現場では,救助者による現場情報の共有化が必要である.しかし現場では,既存のインフラは破壊された状態であることが多い.特に,2011年3月11日に発生した東日本大震災においては,津波による被害が大きく,被害の全容をつかむのが大変困難であった.よって情報の共有化のために,基地局を用いないネットワークの早急な構築が求められる. 2年目である平成22年度はシステムの構築と評価に重点をおいた.まず,情報共有のためのネットワークプロトコルを提案した.このプロトコルでは,経路設定のための情報を交換する際に,共有したい情報も同時に送信し,効率よく情報をネットワーク内の端末で共有することができる.また,各端末が独立して動き回るため,端末の位置情報を求める必要がある.ここでは近距離センサネットワークで用いられるZigBeeを用いて,ベイズ推定による2次元位置推定の研究を行った. 次に,ネットワークのセキュリティを高めるために,通信の暗号化に着目した.通信路の暗号化にはWEPやWPAなどの方法が用意されているが,いずれにしても,最初に鍵を安全に交換する必要があり,無線LANとは別の通信路を用意する必要がある.そこでLED照明に情報を重畳する可視光通信と,オーディオ信号に情報を重畳する音響通信の2つを提案し,それぞれシステムを作成し評価した.暗号鍵をディジタル変調することで約1m程度離れても,暗号鍵を正常に受け渡しすることができた.来年度は誤り訂正符号等を導入し,通信距離を長くする必要がある.さらに,作成したアドホックネットワーク上で簡単に情報交換するために,双方向NATを導入することでテレビ電話システムをアドホックネットワークへと対応させた. 本年度は,ネットワーク層を中心に研究を進めた.今後は,アプリケーション層を充実させる予定である.
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