Research Abstract |
地震などの災害現場では,救助者による現場情報の共有化が必要である.しかし災害現場では,既存のインフラが破壊されていることが多く,新たにネットワークを素早く手軽に構築する必要がある.平成23年度はシステムの構築と評価に重点をおいた. まず,基地局を用いないネットワークの一例として防犯カメラシステムを構築した.無線カメラ端末が撮影した画像をお互いの端末に転送し,画像を共有する.いくつかの端末がダウンしても,他の端末が画像を保存しているため,監視画像の確保が容易となる.災害発生時には,避難所などにおいてセキュリティが低下するが,このシステムを用いることで,手軽にセキュリティを高めることができる.また,画像の代わりに他のテキストや音声データを共有することで,避難所間の情報共有システムとしても使う事ができる. 少ない送信回数で情報を共有するためには,一斉配信が望ましい.しかし基地局を用いないため通信を管理する存在がおらず,複数の端末の通信が干渉する危険がある.1対1通信の場合は,相手からの返事を得ることで通信が成功したか否かを判断できるが,一斉送信の場合はその方法が使えない.そこで,受信相手を1台決め,その端末との1対1通信を行い,他の端末はその通信を傍受することで少なくとも1台以上の端末に確実に配信する多対一の通信方法を提案した.これにより,低電力低速度の通信システムでも複数端末による画像共有が実現できるようになった. 通信プロトコルとして隣接端末の発見に優れているIPv6を導入し,性能の向上を確認した.副次的な効果として,IPアドレスの枯渇問題にも対応することができ,異なる組織間の通信が容易にできるようになった. 無線通信は通信範囲がわかりにくい問題があるため,LED等の光を用いた可視光通信のシステムを構築し,利用可能エリアがわかりやすい通信方法を開発した.以上が今年度の研究成果である.
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