2009 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトーム解析によるファイロティピック段階の実体解明
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21710195
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
入江 直樹 The Institute of Physical and Chemical Research, 形態進化研究グループ, 研究員 (10536121)
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Keywords | EvoDevo / ファイロティピック段階 / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
当研究は、脊椎動物の胚発生と進化の関係を解き明かし、脊椎動物ボディプラン進化に新たな知見を与えようとするものである。動物発生においては発生初期ほどその重要性が高く、進化的に保存されるという見方がある一方で、咽頭弓形成期周辺の発生中期にこそ進化的な変更を許容しにくい重要な発生ステージが存在するという「ファイロタイプ仮説」も提唱されている。この問題に関する議論は19世紀半ばより続いているが、コンセンサスは未だに得られていない。そこで今年度はゲノム情報の発生における時間展開則をトランスクリプトームレベルで解き明かしていくことで脊椎動物に保存された発生段階を決定することを目的とした。 本年度は3種の脊椎動物(ニワトリ、ゼブラフィッシュ、マウス)の胚を採取し、胚発生過程での保存された遺伝子発現情報動態をマイクロアレイにより網羅的に同定、その時間展開則と類似性評価をコンピュータ解析により行った。今回の解析結果は、咽頭弓形成期周辺の発生中期に種間で最もトランスクリプトームの類似性が高くなることを示しており、ファイロタイプ仮説を支持する結果となった。 発生中期や後期は時間的に初期発生の完遂に依存していることを考えると、今回の結果は意外なものであり、こういった胚段階が保存されるに至った進化的・発生学的理解を探っていくことで、生物進化並びに動物発生のより深い理解に至ることが期待される。また、このファイロティピック段階は、ヒト先天異常児の致死率が最も高い時期とも重なり、どういった発生シグナルの撹乱が致死へと結びつきやすくなるのかなどの解明への助けともなることが期待される。
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Research Products
(1 results)