2010 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトーム解析によるファイロティピック段階の実体解明
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21710195
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
入江 直樹 独立行政法人理化学研究所, 形態進化研究グループ, 研究員 (10536121)
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Keywords | 進化発生学 / トランスクリプトーム / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
動物の体の形は非常に多様性に富んでいるとされる一方で、その基本的ボディプランは属する系統群により「縛り」がある。例えば、ヒトやショウジョウバエを含む左右相称動物は前後軸に対して基本的に左右相称な形に、脊椎動物は脊椎を持つという共通の形に縛られている。なぜであろうか。 これは進化発生学が答えるべき問題のひとつとして、19世紀のヘッケルの時代より続いてきたものであり、個体発生と系統発生の定式化は長年議論されてきた。特に比較形態学の知見より、これまで主に2つのモデル(漏斗型モデルと砂時計モデル)が提唱されているものの、未だにその決着はみていない。 今回我々はこうしたモデルの検証を行うため、これまで用いられてきた形態学的方法ではなく、遺伝子発現プロファイルの種間比較という方法により検証した。マウス、ニワトリ、ゼノパス、ゼブラフィッシュの初期胚から後期胚までをサンプリングし、それら遺伝子発現プロファイルの比較解析を理研スーパーコンピュータ(RICC)を用いて解析したところ、発生の中期、特に咽頭胚期が初期胚や後期胚よりも遺伝子発現プロファイルの点で保存されていることがわかった。これは、発生砂時計モデルの妥当性を示すものであり、脊椎動物が頭部や体幹部の分節性などの高次構造をボディプランとしてもつという仮説と非常によく一致するものである。 我々の研究成果は、個体発生と系統発生の長年の問題に答えるというだけでなく、初期胚から中期胚にかけての多様性が減少するという極めて不可解な現象が今後の大きな問題であるということを示すものでもある。また、異なる生物種間で発生タイムテーブルを分子レベルで比較解析する際の足がかりとなることも期待される。さらに、今回得られた大規模トランスクリプトームデータはArrayExpressデータベースに置き、全世界に無償で公表した。
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Research Products
(9 results)