2009 Fiscal Year Annual Research Report
菌根菌の菌糸分岐誘導および植物の分枝抑制活性を有するストリゴール類に関する研究
Project/Area Number |
21710214
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
庄司 満 Keio University, 薬学部, 准教授 (30339139)
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Keywords | 5-デオキシストリゴール / 全合成 / 植物ホルモン / 還元的炭素-炭素結合形成反応 / 有機化学 |
Research Abstract |
陸上植物の80%以上が利用する菌根共生は、植物が菌にグルコースなどのエネルギー源を与え、菌が植物にリン酸塩などのミネラルを与える相利共生である。しかしながら、その分子レベルでの作用機構は長い間不明のままであった。最近になって、植物根から分泌される5-デオキシストリゴール(1)が、アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐を誘導する宿主認識シグナルとして、単離、構造決定された。興味深いことに、1は、根寄生植物の種子発芽刺激物質として報告されていた、ストリゴール(2)の誘導体であった。すなわち、植物が菌根共生のために菌に「発信」する1を、根寄生植物が「傍受」して宿主の存在を「感知」し、種子発芽刺激物質として利用しているという巧妙な生物間相互作用が明らかにされた。菌根共生の調節制御機構の解明と、植物における共生と寄生という、生物間現象のより深いレベルでの解明は、非常に興味深い研究課題である。一方、ごく最近、1の合成類縁体であるGR24を用いた生物活性試験により、1は、植物の分枝を抑制する新規植物ホルモンとして提唱され、国内外で注目を集めている。 研究代表者は、チタンおよびサマリウムを用いた還元的炭素-炭素結合反応を鍵反応として、5-デオキシストリゴール(1)のラセミ体での全合成を達成した。さらに、不斉配位子を用いたジケトン中間体の、不斉ピナコールカップリング反応による光学活性の合成を試みたが、得られた生成物はほとんどラセミ体であった。そこで、酵素を用いたラセミ体の速度論的光学分割による光学活性体の合成をおこなうため、生化学的研究のための量的供給可能な1の合成ルートの探索を検討した。
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