2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜のケミカルジェネティクス研究:Theonellamideの真の標的は何か?
Project/Area Number |
21710227
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 慎一 Kyoto University, 薬学研究科, 助教 (30415260)
|
Keywords | ケミカルジェネティクス / 海洋天然物 / 脂質生物学 / ケミカルゲノミクス / 分裂酵母 |
Research Abstract |
細胞膜を構成する脂質分子のうち、スフィンゴ脂質とステロールは融点の高い会合体を作る。この10年来、生体膜においてそれらの分子とタンパク質が会合して機能的なマイクロドメインを形成していることを提唱する脂質ラフト仮説が受け入れられつつある。シグナル伝達などの生理現象が効果的におこるための集合体として考えられており、1970年代から広く受け入れられていた流動モザイクモデルと異なって構造体自体に機能を付与しようという点が非常に興味深い。しかしその動的な超複合体の形成・維持機構や機能についての理解はあまり深まっているとはいえない。申請者は最近、海綿に由来する抗真菌化合物theonellamide (TNM)が細胞膜中のステロールと相互作用し、分裂酵母において細胞壁の異常合成を誘導することを明らかにしてきた。そこで、TNMを足がかりとしたケミカルジェネティクス研究から脂質膜の機能解析が可能であると期待し、当該年度は以下のように研究を推進した。まず、TNMによる細胞壁の異常合成に必要であるタンパク質の可視化の準備を行った。すなわち、蛍光タンパク質融合型のTNMのエフェクタータンパク質を発現する株を作製し、その細胞内局在を確認した。一方、申請者は、TNMへの感受性を変動する32の遺伝子を分裂酵母の大規模実験によって同定している。当該年度には、これらの遺伝子の再クローニングによる過剰発現株の作製と破壊株の取得を開始し、作製した細胞株についてはTNMを含む薬剤への感受性試験と細胞膜ステロールの局在観察を行った。いくつかの細胞株については、細胞膜の性状の変化を示唆する結果が得られた。以上、当該年度には、TNMの一次標的の同定研究で得られた知見をもとに、細胞膜の構造と制御機構を可視化するためのツールとそれを制御しているであろう遺伝子の研究材料の取得に成功し、現在はその延長とそれらを用いたTNMの詳細な作用メカニズムならびに細胞膜の制御メカニズムの解明を目指している。
|
Research Products
(3 results)