2009 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性物質を介したアブラナ科植物-植食者-捕食者間相互作用の導出機構の分子基盤
Project/Area Number |
21710241
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
釘宮 聡一 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 生物多様性研究領域, 任期付研究員 (10455264)
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Keywords | 生物間相互作用 / 情報化学物質 / 植物誘導防衛 / 寄生蜂 / 間接防衛 / シロイヌナズナ / コナガ / コナガサムライコマユバチ |
Research Abstract |
アブラナ科植物はコナガ幼虫に食害されると特異的な揮発性成分を放出する。寄生蜂コナガサムライコマユバチはそれを手掛かりに寄主であるコナガ幼虫を探索している。食害シロイヌナズナのヘッドスペースのGC-MS分析によって明らかとなった複数揮発性成分のうち一成分について注目し、その生合成候補遺伝子が破壊されている欠損変異株を選抜した[負のスクリーニング]。食害されても目的成分の放出だけが少なく、他の成分の放出量には影響が無いことをGC-MS分析で確認した。この欠損変異株と野生株をともにコナガ幼虫に食害させた後、両者に対する選択試験を行ったところ、寄生蜂は野生株に対して有意な選好性を示した。一方で、同じ生合成候補遺伝子を植物に導入した過剰発現株を選抜・作出した[正のスクリーニング]。健全な状態でも目的成分だけが常に多く放出されていることをGC-MS分析で確認した。この過剰発現株と野生株を健全な状態のままで選択試験に供したところ、コナガ幼虫に食害されていないにも関わらず過剰発現株に対して寄生蜂は有意な選好性を示した。この候補遺伝子は既知の生合成遺伝子であったが、その産物である揮発性成分はコナガの天敵である寄生蜂を誘引することで間接防衛として働いていることが強く示唆され、その遺伝子の機能の生態学的側面に関する新たな知見が得られた。 尚、本研究課題の推進に伴い、バイオアッセイに適した寄生蜂の生理条件(特に交尾経験の影響)を検討する過程で、未交尾雌がコナガ幼虫食害株に対して有意な選好性を示さないという新事実を発見したので、これを国際誌で報告した。また、関連する成果について国内外の学会で発表した。
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