2011 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性物質を介したアブラナ科植物-植食者-捕食者間相互作用の導出機構の分子基盤
Project/Area Number |
21710241
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
釘宮 聡一 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 主任研究員 (10455264)
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Keywords | 生物間相互作用 / 情報化学物質 / 植物誘導防衛 / 間接防衛 / 寄生蜂 / コナガサムライコマユバチ / コナガ / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
寄生蜂コナガサムライコマユバチはアブラナ科植物の重要害虫であるコナガの幼虫に産卵.寄生する。 これまで、遺伝子組換えシロイヌナズナ等を用いた解析により、寄生蜂の雌が寄主探索の手掛かりとして用いる植物揮発性成分(匂い)を明らかにしてきた。植物にとって、食害が引き金となって誘導的に生産する匂いは、害虫の天敵を誘引することで被害から守ってもらうための間接的な防衛手段であると考えられる。平成23年度では、植物の匂いの他の働きについても検討した。 コナガをコマツナ切葉で飼育すると、完全な植物体で飼育した場合と違い、最終的に容器内がクモノスカビの仲間Rhizopus sp.に覆われることから、これに対する植物の匂いの抗菌効果について検討した。分割シャーレの片側に、未被害時でも匂いを生産するシロイヌナズナ過剰発現株を培養し、残る片側にはカビを塗布したペーパーディスクを置いた。対照として野生株を同様に準備し、植物の匂いがカビの生育に与える影響を比較したところ、双方に顕著な差は認められなかった。食害時に匂いを誘導生産できないcoi-1株と野生株の両食害株を比較した場合も同様であった。植物が実際に放出する低濃度の匂いでは、高密度のカビの生育を十分に抑制できないためと推測される。さらに、異なる病原菌等も用いて、葉面上での胞子出芽率や菌糸伸長速度などに匂いが与える影響を比較することで、植物の匂いの多面的機能について新知見が得られると期待される。 一方、花香は最も特徴的な植物の匂いである。花香の化学分析で様々な成分を検出するなかに、食害葉から放出される同じ成分も含まれることを明らかにした。寄生蜂は空腹時に花へ、満腹時に食害葉へ定位することから、どのように両者を識別して適切に探索するのかは新たに生じた課題として大変興味深い。 尚、これらと関連する研究の成果を国際誌で報告し、国内外の学会で発表した。
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