2010 Fiscal Year Annual Research Report
外来植物が土壌分解系を介して生態系に影響を与えるメカニズムの解明
Project/Area Number |
21710243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒川 紘子 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教 (70515733)
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Keywords | 外来種 / 植物機能的性質 / 炭素・栄養塩循環 / 小笠原 / フェノール性物質 / 植物群集 |
Research Abstract |
昨年度の結果より、小笠原諸島の移入種であるアカギは、在来群集に比べ葉の機能的形質が異なることがわかっている。具体的には、葉の面積あたりの重量や含水率、窒素濃度はアカギと在来群集の平均値とで大きく変わらなかったが、二次代謝産物である縮合タンニン、総フェノール濃度に関しては、アカギは在来群集より高い値を持っていた。 そこで今年度は、アカギがその落葉の性質によって土壌生態系にどのような影を与えているめかを調べるため、アカキの密度の異なる(0-100%)26のプロット(10mx10m)を作成し、毎木調査と土壌調査を行った.土壌サンプルは、直径5cmx高さ3cmの採土管を用い、各プロットとも5カ所ずつ採取した土を合わせて一つのサンプルとして分析を行った。分析項目は、土壌中のフェノール性物質濃度、栄養塩(無機態窒素、可給態リン)濃度、士壌呼吸(微生物群集活性の指標)、微生物群集組成である。その結果、アカギの密度(群集全体の胸高断面積合計におけるアカギの胸高断面積の割台)が増える程、群集全体のフェノール性物質濃度は増加していた。さらに、群集内のアカギ密度と土壌pHの間には正の相関関係(r=0.557 P<0.01)、土壌中のフェノール性濃度との間には負の相関関係(r=-0.562,P<0.01)があった。また、微生物群集の潜在的な活性能力をしめす呼吸量(basal respiration/substrate induced respiration)との間にも負の相開関係(r=-0.493,P<0.05)があった。つまり、アカキが増えるほど、土壌は酸性になり、土壌中のフェノール性物質濃度と微生物の活性が抵くなる可能性が示された。今後は土壌の栄養塩濃度など、現在測定中の他の測定値も加味して、示されたパタンの因果関係を明らかにする予定である。
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