2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来植物が土壌分解系を介して生態系に影響を与えるメカニズムの解明
Project/Area Number |
21710243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒川 紘子 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教 (70515733)
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Keywords | 外来種 / 植物機能形質 / 炭素・栄養塩循環 / 小笠原 / フェノール性物質 / 植物群集 |
Research Abstract |
小笠原諸島の移入種であるアカギの密度の異なる(0-100%)調査プロット(10mx 10m)において行った調査より、アカギの密度(群集全体の胸高断面積合計におけるアカギの胸高断面積の割合)が増える程、土壌は酸性になり、土壌中のフェノール性物質濃度と微生物の活性が低くなる可能性が示された。そこで今年度は、群集組成と土壌特性の間にみられたパタンをより詳細に解析するため、各調査プロットにリタートラップを設置し、群集組成と落葉量の関係を明らかにした。 全体の傾向として、樹木群集の胸高断面積(ここでは胸高断面積の合計を群集の地上部バイオマスの指標とする)が増えるほど、落葉量が多くなる傾向にあった(r=0.243,P<0.1)。この傾向は、アカギと在来種を分けたときにより顕著にみられ、群集内のアカギの胸高断面積とアカギの落葉量、在来種の胸高断面積と在来種の落葉量には、それぞれ有意な正の相関関係があった(アカギ:r=0.678,P<0.05,在来種:r=0.765,P<0.01)。つまり、群集内でアカギの地上部バイオマスが増えるほど、土壌に供給されるアカギの落葉量も増加することを示している。しかし、在来種のみの群集とアカギのみの群集を比較すると、在来種のみの群集の方がアカギのみの群集より、現存量は平均して1.2倍ほど、落葉量は平均して2.7倍ほど高いことがわかった。つまり、昨年度の結果で示されたように、アカギの群集内密度が高くなるほど土壌が酸性になり土壌微生物活性が低くなるという傾向は、群集内でアカギが優占することに、よる落葉量の減少と、アカギの葉の形質の両方に影響されている可能性がある。今後は、アカギの落葉を用いたリターバッグ実験を行うことにより、外来植物が落葉を介して土壌に影響を与えるメカニズムをさらに詳細に検討したい。また、土壌栄養塩の解析を引き続き行う予定である。
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Research Products
(3 results)