2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア海草相の遺伝的構造に影響する生態及び海洋環境要因の解明と保全への適用
Project/Area Number |
21710248
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
|
Keywords | 海草 / 遺伝的構造 / 固有種 / 保全 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
コアマモZostera japonica(アマモ科)は、日本列島を中心にサハリンからベトナムまでの潮間帯~潮下帯、沿岸の汽水域などに生育する。海草の中では最も広い生育温度域を持ち、葉などの形態変異も大きいため、種内分類群や生態型が示されることもあった。そこで、分布域全体からの60集団について、葉緑体DNA(psbA-trnH、trnL-F)と核DNA(phyB)の塩基配列を決定し、種内の遺伝的構造を解析した。その結果、ハプロタイプ解析では、葉緑体と核のいずれにおいても、本州中部地域から主に北に分布するハプロタイプ群と南に分布するハプロタイプ群が存在し、系統的に起源の異なる2つの系統群にあたることが明らかになった。境界領域では交雑している個体が検出されたことから、両グループ間で完全な生殖隔離が起きているわけではない。系統的に姉妹種にあたりヨーロッパに分布するZostera noltiiは、コアマモの内群となることがわかり、遺伝的な変異も非常に小さいことがわかった。これは、Z.noltiiの起源が大陸移動による分断ではなく、移住による可能性が高いことを示唆している。また、Z.noltiiに開発されたマイクロサテライトマーカーのうち、6種類がコアマモの解析に適していることが明らかになった。予備的な解析では、分布域が重なるアマモと同様な遺伝子流動の傾向が見られた。さらに、コアマモの2型が南北に棲み分ける原因を明らかにするために、生息環境適性解析を予備的に開始した。過去20年以上の海水面温度のデータを用いて解祈した結果、夏期の水温と冬期の水温の範囲がそれぞれの分布に強く影響しているこが示された。
|
Research Products
(7 results)