2010 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の中のソ連時代:中央アジア地域研究のための映像資料作成の試み
Project/Area Number |
21710249
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
ティムール ダダバエフ 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (10376626)
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Keywords | 旧ソ連中央アジア / キルギス / ポスト社会主義 / 記憶 / 日常生活 / 帝国論 / 政治の転換 / 社会構造 |
Research Abstract |
本企画は、中央アジア・キルギスの人々がソ連時代をどのように記憶しているか、そのインタビュー調査記録を画像として保存、公開することを目的とする。ソ連時代の記憶は、ソ連解体後の現代においても、人々のアイデンティティや現代史の理解において重要な意味を持っている。本プロジェクトは、ソ連時代を生きた比較的高齢の人々を訪ねて普通の人々の目線から見た当時の社会や生活の記憶を収録する。それを映像資料として保存、公開することにより、ソ連時代と現代の急速な変容とを相対化してとらえ、人々が新しい社会の形成において前向きの展望を得る契機を提供したい。ソ連時代の記憶は今記録しておかなければ、永久に失われてしまうだろう。 本研究の成果として以下のことがあげられる。まずは、日本と現地の研究者がキルギスの60代から80代の一般の人々の証言、資料や情報を共同で収集するだけでなく、画像化とデータベース化による保存と公開を目指してきた。その結果、2009年4月から2011年にかけて、複数の共同現地調査が実施されており、これらを通して75人の高齢の回答者の意見を集めることができた。これらの文書化と翻訳が進められていると同時にこれらのインタビューの映像が加工されて公開のための準備が進められている。第二に、本研究の研究成果は複数の国際会議において公表されており、これらはケンブリッジ大学、イスタンブール・マルテペ大学、ストックホルム大学で開催されたものである。また、本研究の成果は『記憶の中のソ連-中央アジアの人々が生きた社会主義時代』という著書の形で筑波大学出版会により刊行された。第三に、本研究の過程を通して、日本と現地の研究者や市民の間にソ連時代の記憶というキルギス市民の遺産に関して共通の認識や理解を深め、より客観的な歴史観を形成することができるよう努力がなされた。さらに、本研究は、普通の人々の記憶を収集するとともにこれを映像資料として市民に還元し、その共有化をはかるという特色がある。これは、広く近現代史と現代の変容、様々な不安定要因や社会内の諸問題に対するローカルレベル(一般国民の目線)での認識の深化を促すと思われる。
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