2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト公民権運動期の米国における公共交通網の形成と異人種・階級間関係の変化の研究
Project/Area Number |
21710250
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
宮田 伊知郎 埼玉大学, 教養学部, 准教授 (80451730)
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Keywords | アメリカ / 都市史 / アメリカ研究 / アメリカ南部史 / 公共交通 |
Research Abstract |
本プロジェクトの目的はジョージア州アトランタにおける公共交通システム形成のプロセスを分析し、ポスト公民権運動期のアメリカ南部都市の政治文化を解明することである。2010年度においては、次の2つの研究テーマについて調査・執筆を行った。一つはジョージア州選出の連邦議会議員が公共交通システムの形成に果たした役割である。連邦議会議事録や各種委員会のヒアリング、前年度までにアーカイブスで取得してきた州知事の書簡、新聞などを史料として利用した。いま一つはアトランタにおける黒人コミュニティと公共交通システムの形成の関係であるが、入手済みの黒人新聞や家政婦組合の文書を使い分析を進めた。この二つの研究によって次のことを明らかにした。都市発展が急速に進んだジョージア州において、アトランタ大都市圏出身の民主党議員達はかつて力をもっていた農村部の政治勢力をおさえ都市開発への公共投資を推進した。しかしながら、経済発展を至上目的とした彼らの議論のなかでは公共交通システムの受益者に関する配慮は不十分だった。黒人コミュニティはここに声を上げプラン等において譲歩を勝ち取った。だが、このことが公共交通と黒人を連想する思潮を強化していった。この部分を前年度までに進めてきた研究とあわせ博士論文"'Setting Atlanta in Motion' : The Making and Unmaking of Atlanta's "Public" Transit,1952-1981を完成し、ジョージア大学に提出した。2010年11月にアセンズ市で行われたディフェンスを経て、12月に受理された。
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