2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル時代におけるアフリカ遊牧社会の生存戦略と発展の潜在力に関する研究
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21710256
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
孫 暁剛 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (20402753)
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Keywords | アフリカ / 遊牧社会 / 生態人類学 / 生存戦略 / 自然災害 / グローバリゼーション / 生業多角化 / 持続可能な発展 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アフリカの乾燥・半乾燥地域に暮らす遊牧民が、地球規模な気候変動にともなう自然災害(旱魃、集中豪雨など)の増加と、グローバリゼーションや市場経済化にともなう社会・経済環境の急速な変化にどのように対処して生業を維持しているのかを明らかにすることである。 22年度は実施計画の通り、資料収集と比較研究、海外研究機関等との研究交流、そして現地調査を行なった。 まず、継続調査で得られたデータの分析結果をもとに、資料収集で得られた1970-80年代の研究記録等との比較研究をおこなった。その結果、各国政府によって進められた定住化政策が遊牧民の生活様式を大きく変え、それによって遊牧社会が自然災害に対して脆弱になった共通点が明らかになった。一方小規模な開発援助(井戸作りや女性に対するエンパワメントなど)が人々の生活改善に役に立ち、また遊牧民が様々な新しい経済活動を試しながら、遊牧を維持しようとしている共通点も明らかになった。遊牧を持続させるためには、国の行政から牧畜民の家族経営まで、様々なレベルの情報共有と協同が重要であることを提案した。この成果は国際シンポジウムで発表した。 次に、ドイツのマックスプランク社会人類学研究所やモンゴル国家アカデミなどを訪問して、遊牧民研究や乾燥地の自然生態に関する最新の研究成果を収集するとともに、研究者と意見交換し、研究の発展について議論を行なった。 さらに、ケニア共和国の乾燥地に暮らす遊牧民を対象に2週間の現地調査を行なった。ケニアは2008年から干ばつが発生し、2009年の夏には状況が深刻化したが、2010年3-5月の大雨期に雨に恵まれ、遊牧民の生活状況が改善された。現地調査では遊牧民の放牧キャンプに訪ね、家畜の移動や水の利用、治安問題や食料援助について集中的に聞き取りを行なった。
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