Research Abstract |
本研究の目的は,満洲移民の入植をめぐる中国東北地域社会の変容を,黒龍江省樺南県,吉林省徳恵県,遼寧省盤錦市の3つの地域の事例から分析することである。2009年度は,1)日本国内および中国東北地域(瀋陽,長春,哈爾濱,佳木斯),台湾(台北)で事例地域に関する民国期,戦後内戦期の資料を収集するとともに,黒龍江省(樺南,湯原)でフィールド調査を実施した。2)調査の概要の一部は「土龍山事件のその後:中国黒龍江省樺南県,湯原県における調査から」(『近現代東北アジア地域史研究会NEWS LETTER』第21号)にまとめている。3)大阪(2009年8月)と中国(9月)で国際シンポジウムに参加し,盤山県と樺南県の事例についてそれぞれ中間報告を行った。 以上の調査・研究によって,まず樺南県の事例では,戦後内戦期における在地有力者の再編,移民用地の解体の過程に関する資料が収集できた。『農民報』『合江日報』などの分析とあわせ,論文執筆を進めている。また盤錦市の事例では,戦後国民政府が同地域を軍人復員事業の一環として重視していたという興味深い知見が得られた。来年度,共産党政権による同農場の経営に関する資料収集を進め,戦後の農場経営史として論文にまとめる。同時に,内戦期東北に関する研究が同時期の台湾研究と比較しても,きわめて遅れていることがあらためてわかった。その意味で,民国期から戦後内戦期までの連続性をとらえようとする本課題は,近年の研究潮流とも緊張関係をもちつつ,あらためてその重要性が確認できたといえよう。4)試験的に本課題のホームページを開設し,図書館・梢案館の利用,フィールド調査の概要などを掲載し,情報の共有化をはかっている。
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