2011 Fiscal Year Annual Research Report
上座部仏教社会における女性出家形態の変容と比丘尼復興―タイ・スリランカ比較研究―
Project/Area Number |
21710262
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 友美 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40337746)
|
Keywords | 上座部仏教 / メーチー / 比丘尼 / タイ / スリランカ |
Research Abstract |
平成23年度には、本研究課題に関して、スリランカでの調査1回、タイでの調査1回、タイと台湾で行われた国際会議で2回の研究報告を行った。 まず、平成23年4月1日から7日にかけて、スリランカの比丘尼受戒再開をリードしてきたシリスメダー比丘尼、説法師として高い尊敬を受けるダルマシリ比丘尼、ダンマナンダニー比丘尼、デーヴァサーラ比丘尼、スリランカでの比丘尼受戒を支援した台湾の僧院団体に属するシンガポール人比丘尼覚門法師に対してインタヴューを行った他、在来の十戒女性修行者(ダサシルマーター)の教育施設や沙弥尼の教育施設を訪問し、両施設の責任者にインタヴューし、両者の教育体制や見解の違いについて聞き取りを行った。今回の調査では、スリランカで比丘尼受戒が社会的に定着し、比丘尼は宗教省を通じた国家の管理体制には組み込まれていないものの、比丘尼受戒に反対する者は、一部の限られた高齢の比丘やダサシルマーターに限られており、特に長期にわたって出家生活を送るダサシルマーターの大半がすでに比丘尼となっていることを確認した。 平成23年6月11日から25日にかけては、第12回サキャディーター国際女性仏教徒会議(バンコク、6月12~18日)と第16回国際仏教学会議(台北、6月20~25日)にて、研究発表を行い、海外の研究者および僧侶などの仏教実践者との意見交換を行った。 平成23年9月25日から10月7日にかけては、タイで華人が行う九皇斎という祭礼の期間中、バンコクおよびバンコク近郊にあるいくつかの仏教・道教が混交した華人宗教コミュニティを訪問し、女性宗教者について調査した。これらの宗教コミュニティに祀られている位牌を見る限り、男性よりも女性宗教者の数が圧倒的に多かった。また、日課として読経する経典や拝礼の対象とする神仏には、仏教の要素が見られるものの、仏教の僧侶と同じように剃髪して決まった僧衣を着用して「比丘尼」を名乗る女性宗教者はかなり少数派であり、多くが有髪で、儀礼以外の日常生活では特に決まった僧衣を持たないことが分かった。
|
Research Products
(5 results)