2010 Fiscal Year Annual Research Report
「性差医学・医療」の社会学:医学・医療実践における「性差や性別に関する知」の検討
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21710269
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中塚 朋子 奈良女子大学, 人間文化研究科, 博士研究員 (50457131)
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Keywords | 性差医学・医療 / エスノメソドロジー / ジェンダー / 薬害HIV感染被害問題 |
Research Abstract |
平成22年度は、総括と体系化に向けて、個別事例の検討を行うことを目的とした。 (1)まず、「性差医学・医療」の把握や理解を目的として、これまでの国内・国外の「性差医学・医療」の取り組みや経緯を主に文献資料をもとに情報収集を行った。 (2)次に、「性差医学・医療」に関する学会や研究会の報告書を資料収集し、研究の対象や方法などの情報からその特徴の分類を行い、質的・量的な方法によって整理した。具体的には、国内の「性差医学・医療」の活動が本格化した2004年から2006年まで発行された学術雑誌『性差と医療』(2004年4月号~2006年12月号、じほう)の分析である。その一方で、性差医療・医学の実践が一般に周知される過程を明らかにするために、国内の主要な全国紙である朝日新聞・読売新聞・毎日新聞の各データベースと各紙縮刷版を探索し、「性差医学・医療」(女性医療・男性医療含む)および「専用外来」(女性外来・男性外来など)の記事の取り扱いについて、その変遷を質的・量的方法により検討した(~2010年12月31日掲載分まで)。これらの検討は、本研究の目的である「性差や性別に関する知」が産出される過程の分析に該当する。くわえて、国内の「性差医学・医療」を牽引してきた天野恵子医師らの活動に注目し、「性差医学・医療」の実践(研究・臨床・教育)に関する意義や課題を検討した。その際、天野恵子医師へ「性差医学・医療」に関する活動についての聞き取りも実施した。 (3)さらに、共同研究として取り組んでいる2つの研究グループでは、「性差医学・医療」のエスノメソドロジー研究として、次のような活動を行った。(1)共同研究「臨床教育のビデオエスノグラフィー」(代表:徳島大学樫田美雄准教授)において、医学部生による医療面接のグループ実習の教育場面の検討を行った。(2)共同研究「『血液の安全性』の社会学的研究-『薬害HIV』の多声的記述-」(代表:産業医科大学種田博之講師)においては、非加熱製剤によるHIV感染問題に関する調査研究を実施した。また、エスノメソドロジー研究の成果の一環として、関連学会にて「写真鑑賞場面における相互行為分析」という主題で報告した。
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