2009 Fiscal Year Annual Research Report
時間現象の倫理学的探求-ハイデガーとレヴィナスの相互照明-
Project/Area Number |
21720002
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
横地 徳廣 Hirosaki University, 人文学部, 講師 (00455768)
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Keywords | 時間 / 倫理 / 他者 / 世界 / ハイデガー / レヴィナス / レーヴィット / 九鬼周造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)時間性の時熟(あるいは時間の時間化)、(2)自己他者関係、(3)世界の様相という三者の相関性を考察し、それによってM・ハイデガーとE・レヴィナスの哲学的思考が互いに照らしあう共通地平を《時間の倫理学》として提示することであった。とはいえ、彼らの思想をその外側から眺め、比較しようというのではない。本研究が与かったのは、レヴィナスのハイデガー解釈と、この解釈/批判が自己他者関係の非対称性というレヴィナスの根本発想の形成に与えた影響とを見定めたうえで、二人の時間論・自己他者関係論・世界論の交差状況を計測し、これら三つの議論を有機的に体系化していく試みである。 加えて、K・レーヴィットや和辻哲郎、九鬼周造によるハイデガー解釈/批判を手がかりに<共同存在と時間>の相関性を問う哲学的思考の可能性をハイデガーの超越論的哲学のうちに探り、ハイデガー哲学における単独者のエートスとレヴィナス倫理学における非対称的自己他者関係のエチカとのあいだに広がる余白を埋めている。 以上のようにハイデガー解釈/批判を検討することで、彼の哲学的思考に含まれた実質と可能性とがあらわになり、同時に、これらを光源にして、レヴィナス倫理学の独自性はハイデガー批判からその思考原理が形作られた「鬼子」として際立つ。こうして再構成された、時間・他者・世界にかんする二人の倫理学的思考は、本研究にあって、二つの中心をもった楕円状の有機的体系として提示されている。
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