2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720004
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 隆文 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科文系, 講師 (40466727)
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Keywords | ヒューム主義 / 欲求 / 主体性 / 間接情念 / 動機づけ理由 / マイケル・スミス / コーホン / 合理性 |
Research Abstract |
本年度は、研究最終年度であると同時に、ヒューム生誕300周年の節目の年度でもあった。それゆえ、国内・国外において広くヒューム研究が行われた年でもあった。こうした状況のもと、各種学会での情報収集、そして多種多様な研究者との意見交換を通じ、そこから「新たなヒューム主義」への方向性をもった研究を展開できた年ともいえる。 ◇具体的には、昨年度公表した学会誌論文「ヒュームは契約論者でありうるのか?-ゴティエのヒューム分析を通じて-」において問題となった「正義そのものの顧慮(regard of justice)」が、ヒューム主義のもとどのような情念状態として位置づけ可能であるのか、そしてそれは、どのような形で「合理主義」と呼ばれる諸思想と接合可能であるのか、というテーマに焦点をあてた。そこで、そうした心的状態が、「欲求」というような直接情念として還元できるのか(マイケル・スミスのヒューム主義)、それとも、「誇り」や「卑下」といった間接情念として置き換え可能であるのか(レイチェル・コーホンのヒューム主義)、あるいはそもそも、反ヒューム主義的合理主義がいうように、そもそもそれは情念と独立的な判断にすぎないのか、ということを吟味・精査した。その結果、マイケル・スミスのヒューム主義を軌道修正しつつ、コーホンの間接情念論をそこに補足することで、従来の道徳心理学におけるヒューム主義の行き詰まりが解消できる、との見解に達した(これについては、本年度学会発表「「欲求」と「主体性」」で言及している)。 ◇また、本年度はヒューム生誕300周年ということで、国際的なヒューム研究者が集うHume Sociteyの記念大会に出向き、幅広い、そして最先端のヒューム研究を調査することができた。そのリサーチ結果は本年度執筆の学会記事「国際ヒューム学会第38回年次大会」で簡単に紹介しているが、当該科学研究費補助金の支援によって、こうした調査およびその内容を広く学会関係者に対し周知できたことは喜ばしい限りである。また、この成果を踏まえ、次年度以降の研究につなげ、さらなるこの分野での探究を行うことで、こうした補助・助成・支援の成果を社会的・学術的な形で還元してゆきたい。
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Research Products
(2 results)