2011 Fiscal Year Annual Research Report
「功利主義vs直観主義」論争の変遷と現代倫理学における直観の方法論的意義の解明
Project/Area Number |
21720005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
児玉 聡 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80372366)
|
Keywords | 倫理学 / 功利主義 / 直観主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、西洋倫理思想における功利主義の位置づけおよびその現代的意義を明らかにするという全体構想の一部として、功利主義が常にその論敵としてきた直観主義に焦点を合わせ、思想史における「功利主義vs直観主義」論争の変遷と現代の倫理学における直観の方法論的意義を解明することである。具体的には、第一に、これまでの功利主義関連の思想史研究を踏まえ、「直観」をキータームとして通史的な検討を行う。それによって抽出された論点を踏まえ、第二に、生命倫理学やその他の関連領域における功利主義と直観主義の理論的・実践的争点を明確にし、今後の課題と展望を示す。 上記の目的を達成するために、思想史的研究に関して、1. 20世紀以前、2. 20世紀前半、3. 20世紀後半以降の三期に分け、これまでの功利主義関連の先行研究を踏まえ、直観をキータームにして研究を行うことにより、「功利主義vs直観主義」という論争の構図を明らかにする。それによって抽出された論点を踏まえ、生命倫理学やその他の関連領域における功利主義と直観主義の理論的・実践的争点を明確にし、今後の課題と展望を示す(4.)。 最終年度である本年度は、主に4.について研究を進めた。具体的には、喫煙対策を始めとする公衆衛生に関する規範理論的な基礎付けという問題を考察し、功利主義が重要な役割を果たしうることを示唆した。これについては、国内の学会や研究会で報告を行なったほか、共著書において論文を執筆した。 さらに、これまでの功利主義と直観主義の関係についての研究を踏まえ、カントが功利主義に与えた影響という、今後の重要なテーマについて研究を着手し、国際学会で報告を行ない、主要な研究者と意見交換を行なった。この研究テーマは、カントの義務論が功利主義に対立するという従来の図式を乗り越えようとするものであり、さらなる研究の発展が期待できるものである。
|
Research Products
(5 results)