2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジャック・デリダの思想における「テレコミュニケーション民主主義」の構築とその展開
Project/Area Number |
21720007
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
|
Keywords | デリダ / 民主主義 / デモクラシー / 友愛 / 敵 / シュミット / 自己免疫 / 海賊 |
Research Abstract |
本研究の最終年度である23年度の研究実績は、以下の三つの視点から、デリダにおける民主主義論の展開をなす論点を解明した点にある。 一つ目は、「敵」について。かつてカール・シュミットは、「敵」の認定と殲滅にこそ政治的なものの概念と国家主権の本質が存在しているとした。こうした「人類の敵」の認定とは、まさに国家主権が主権たりうるために必要としている行為ではないだろうか。そうした観点から、「敵」の具体的形象が「海賊」として出現してくる現代的事象を検討し、民主主義政治の構造的臨界点を解明した。 二つ目は、「自己免疫」について。「自己免疫」は、デリダが民主主義が孕む自殺的論理を解明すべく名づけた生政治的形象である。民主主義の構造を駆動しているのは、それ自体として矛盾を抱えている民主主義の自己を維持するためにこそ、非自己への攻撃を自己自身に振り向けることで当の防御を解除し、かくして他者からの攻撃にみずから曝されなければならないとする自殺的論理にほかならない。学会発表では、現代の民主主義の構造的限界をこのようなデリダの企てから出発して問題化することができた。 最後に、友愛の感情について。以上のような民主主義の難問にどう答えるのかについて、共著に寄稿した論考では、最終的に友愛の感情に目をむけることにより、「情感的なもの」(=美学)の探究の帰結として、友愛の哲学史が示していた、この古くて新しい政治的情動の可能性を再発見するに至った。これは「情動のデモクラシー」を問う、さらに拡張されたプロジェクトの着手へと引き継がれることになる。
|
Research Products
(7 results)