2009 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレス『形而上学』中核諸巻における実体論および現実態論の研究
Project/Area Number |
21720008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 圭一 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (00386509)
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Keywords | 哲学 / アリストテレス / 形而上学 / 実体 / 現実態 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスの「第一哲学」の中でも感覚的事物の存在が主題とされる『形而上学』中核諸巻(ZHΘ巻/第7-9巻)の実体論を研究対象とし、その形而上学的思考様式を正確に把握することを目的とする。平成21年度は、「普遍」の問題が中心的に論じられる『形而上学』Z巻第13-16章を取り上げ、そこに見られるイデア論批判の意義を明らかにした。Z巻第13章における<実体>の個別性という主張は、アリストテレス自身がその章の末尾で指摘するように、<実体>の定義不可能性という問題を生じさせる。Z巻第14章では、エイドスがイデアとしての類と種差からなることの不合理が示されるが、このイデア論批判は<実体>の定義不可能性の問題と無関係ではないことを明らかにした。すなわち、エイドスが定義可能であるために満たすべき条件である複合性-類と種差からなるという-が否定されることで、エイドスの定義不可能性が暗黙のうちに示され、それが個別的な形相としての<実体>の定義不可能性の理解に役立つことを明らかにした。Z巻第15章では、プラトン主義者の語る個物としてのエイドスの定義不可能性が明示的に示され、やはりそこに、アリストテレス自身の語る個別的な形相の定義不可能性を理解させるという目的を見出した。アリストテレスはZ巻第15章において普遍的な形相の存在も認めているが、これらの章では本来的には個別的な形相が<実体>とみなされ、普遍的な形相が<実体>として言及されるのは派生的な意味においてであると解した。Z巻第13章より前の章では、<実体>性の基準として定義可能性が考えられているが、Z巻第13-16章においては、その基準は背景に退き、派生的な意味で言及される<実体>に認められことになったのだと解釈した。
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Research Products
(1 results)