2010 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレス『形而上学』中核諸巻における実体論および現実態論の研究
Project/Area Number |
21720008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 圭一 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (00386509)
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Keywords | 哲学 / アリストテレス / 形而上学 / 実体 / 可能態 / 能力 / 現実態 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスの「第一哲学」の中でも感覚的事物の存在が主題とされる『形而上学』中核諸巻(ZHO巻/第7-9巻)の実体論を研究対象とし、その形而上学的思考様式を正確に把握することを目的とする。平成22年度は、「可能である」ことについて「能力」の概念が中心的に論じられる『形而上学』0巻前半部(第1-5章)のうち、とくに第1-3章を取り上げた。アリストテレスはこれらの章において、技術的な知識を典型とする能動的能力が「デュナミス」の第一の用法であるとして、これを模範的な例としながら、「能力」としての「デュナミス」について独自の説明を展開している。本研究では、アリストテレスの論述に即して、第1章から順に取り上げて、考察を行った。第1章に関しては、とくに「能動的能力」の規定における「他のもの」という表現の意味について考察した。第2章に関しては、「能動的能力」が二つの種類、すなわち、理性的能力と非理性的能力とに分けられる論述を詳しく見て、理性的能力としての技術的な知識が説明方式として存在するとされることをZ巻第7章を参照しつつ確認した。第3章に関しては、能力の存在を否定するメガラ派の見解に対してアリストテレスが提示している反論を取り上げ、四つの反論のうちの最初の三つを詳しく見ることによって、アリストテレスが能動的能力を、当該の能動的能力の所有者の本質的属性であると考えていることを確認し、その哲学的な意義について考察した。以上の考察は、次年度の課題である現実態論を見るために不可欠のものであり、現実態論の意義を明らかにするのに大いに役立つと考えられる。また、これまでの研究成果の再考も兼ねて、アリストテレスの存在論における〈あるもの〉の多様な意味について考察を行った。
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Research Products
(3 results)