2011 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレス『形而上学』中核諸巻における実体論および現実態論の研究
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21720008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 圭一 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (00386509)
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Keywords | 哲学 / アリストテレス / 形而上学 / 実体 / 可能態 / 能力 / 可能性 / 現実態 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスの「第一哲学」の中でも感覚的事物の存在が主題とされる『形而上学』中核諸巻(ZHΘ巻/第7-9巻)の実体論を研究対象とし、その形而上学的思考様式を正確に把握することを目的とする。平成23年度は、まず、『形而上学』Θ巻第8章後半における現実態優先論(「いっそう厳密な意味で」の優先性についての議論)に関するテクストを読解することによって、常に現実的であって可能的にあることのない永遠的なものについての見解が、中核諸巻の実体論の範囲を超えるものであることを確認した。そして中核諸巻の実体論における「現実態」概念の意義を見出すには、むしろ、「可能性」および「可能態」の概念について理解を深めることが重要であることが明らかになった。そこで、『形而上学』Θ巻第3章におけるメガラ派批判の意義について、その批判の全体を取り上げて、考察を行った。その結果、メガラ派が否定する能力(発揮されていない能力)の存在が確保され、そこから、「可能性」の概念が明確に規定されるという道筋が明らかになるとともに、「可能性」の規定が「不可能性」の概念に基づいていること、そして不可能なものが確かに存在するとアリストテレスが信じていたことが明確になった。次に、中核諸巻の実体論における「可能態」の概念をより明確にするために、「可能態」が適用される「質料」について、『形而上学』H巻第4-5章およびΘ巻第7章のテクストを取り上げて、考察を行ったも。その結果質料の階層に関するアリストテレスの見解が明確になるとともに、「質料」に適用される「可能態」が、「可能性」よりも制限的であることが明らかになった。この制限的な用法が「可能態」の厳密な用法なのであり、この用法における「可能態」との関係において「現実態」としての「形相」が理解されるべきであるこどが明らがになった。
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Research Products
(2 results)