2009 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系障害における身体行為メカニズムの現象学的解明
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21720011
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
稲垣 諭 Toyo University, 文学部, 助教 (80449256)
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Keywords | 身体行為 / 現象学 / リハビリテーション / 行為計画 / 実行機能障害 / 注意 |
Research Abstract |
本研究は、中枢神経系障害者リハビリテーションの現場の知見から、「現象学的な意識経験」を媒介する「身体行為のメカニズム」を機能的に類型化し、その特質を発見することで、セラピストおよび医療関係者が治療設定の手順を決定し、治療技法の開発を行なうさいの「戦略的手がかり」となるところまで理論構想を深化させることを目的としている。研究計画において、臨床的知見として採用可能な身体行為のメカニズムは、1)「行為-実行システム」、2)「行為-注意システム」、3)「行為調整システム」、4)「行為-起動システム」、という機能システムとして特定されていた。今年度は、1)と2)の行為システムについての解明が行われた。脳の機能部位としては、1)前頭葉、側頭葉、2)頭頂葉、視床である。1)のシステムには、人間らしい行為を特徴づける機能性、例えば計画の構想、実行、結果の吟味、その際の動因となる感情の作動が重要な特性として含まれており、2)のシステムでは、対象へと意識がアクセスする以前に、当の対象とのかかわり方を行為的に決定する注意、眼差しの働きが重要な特性となる。注意には、焦点型、現実形成型、脱力型、行為統合型というようにさまざまなタイプが存在し、それぞれのタイプの欠損がそのまま固有な病態の出現となる。ただし「行為・実行システム」の欠損は、前頭葉や頭頂連合野、側頭葉の病巣と深い関係をもつ高次脳機能障害として顕在化するのに対し、「行為・注意システム」の欠損は、注意という機構の成立にさまざまな脳部位がループ状に関与していることから、失認片麻痺、バリント症候群、空間無視といった多くの病態に関与する、身体行為にとっての基礎的システムであることが明らかになった。
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