2010 Fiscal Year Annual Research Report
神話にみられるヒトと自然の相互関係―東アジア基層文化の宗教民族学的研究―
Project/Area Number |
21720021
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 仁史 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90422071)
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Keywords | 神話 / 自然 / 東アジア / 基層文化 / 宗教民族学 |
Research Abstract |
平成22年度は、これまで「野獣の主」と称してきた概念を、より実情に即した「動物の主」と言い換えるなど、やや根源的な考察を深めた。それはつまり、「野獣」という語で表現することにより、魚や鳥などが含まれないニュアンスを帯びると考えたためである。実際には、東北地方の「鮭のオースケ・コースケ」など、「魚類の主」も多数報告されている。こうした実情を考慮したものである。 また今年度は、アイヌ民族における「動物の主」概念など具体的な事例の検討を進めた。国外での学会発表を2度行なったため、予算の制約に伴い、実地調査はあまり行うことができなかった。具体的には、裏面記載の論文、その他のエッセイ、同じく裏面記載の学会・シンポジウムにおいて研究発表を行ない、成果の一端を公にした。とりわけハーバード大学で開かれた国際比較神話学会第4回大会においては、アイヌの「動物の主」について発表した。そこでは、鹿の毛や魚の鱗が箱の中に保管されており、人間たちが敬意ある態度で動物たちに対峙することで、これらが与えられる、という観念が見られた。さらに同様の観念はシベリアや北米にも広く見られることが明らかになった。これは従来あまり注目されてこなかったが、持続可能な自然利用のあり方についての、土着の伝承を示すものとして、非常に貴重なものと考えられる。 少ない実地調査としては、ラオスにおける家畜と人間の相互関係、とりわけ上座部仏教とアニミズムのせめぎ合うルアンパバーン県北部の村落における肉食の禁忌など、興味深い事例を調査できた。国内ではマタギの里とされる山形県小国町で調査したが、今年は現地側の事情により熊祭が中止され、調査することができなかった。
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Research Products
(12 results)