2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720022
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
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Keywords | イスラーム / 生命倫理 / 初期胚 / 女性 / ガザーリー |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までの中絶や家族計画に関する研究を踏まえ、特に初期胚の破壊を伴うES細胞を利用した再生医療の問題を取り上げた。そして古今のイスラーム思想家の議論を比較し、古典イスラーム思想の現代的意義を明らかにした。さらにイスラーム(イスラーム教)の生命倫理を客観的に見直すために、イスラームの兄弟宗教である、ユダヤ教、キリスト教の初期胚に関する議論との比較も行い、三大一神教におけるその特徴および位置づけを解明した。アメリカ国家生命倫理諮問委員会の報告書などを中心として、以下のような結論を得た。 (1)イスラームにおいては、中絶の議論と同様、ES細胞の議論においても、中絶と同様に入魂に関するコーランおよびハディースが持ち出され、大多数の見解では、再生医療に使用するためならば、受精卵を破壊し、ES細胞研究を行うことは許可されるという結論に至っている。 (2)ユダヤ教においては、旧約聖書やタルムードに基づき、妊娠40日までは胎児は水のような存在であり、人格を持たないと考えられるため、ES細胞研究への利用は許されるという見解が一般的である。しかしながら、初期胚利用を認めつつも慎重な立場も見られた。概してユダヤ教は、ES細胞の樹立と研究を認め、聖典に依拠して初期胚が人間とみなされるおおよその時期を定めている点、また利益と損失を比較して病気の治療を優先する点がイスラームと共通している。 (3)キリスト教においては、新約聖書では中絶について直接言及していないが、『十二使徒の教訓』における胎児を殺してはならないという文言やローマ教皇の回勅等に基づき、リベラル派を除き、概して最も弱い存在である受精卵の段階で人格を認め、初期胚の破壊には反対の立場が多いと言えよう。またアメリカにおいては、公的資金の投入の可否といった政治政策に積極的に働きかけている点が特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)